脳梗塞を発症した後に、握力が極端に低下した患者さんがいます。(2025/10/11)

目次

質問者:花井邦宏さん

脳梗塞を発症した後に、握力が極端に低下した患者さんがいます。
病気の発症前は女性で50ぐらいの握力があったそうです。本人との会話で、ボールペンで字を書いてると自分の力でボールペンを折ってしまうこともあると話してくれました。本人も凄い力が出る事に不思議に感じていましたが、職場の人が自分の握力を頼って些細な事を頼まれたりするのが心地よく感じているようでした。
脳梗塞発症後は握力が低下して今はペットボトルのキャップも開けることが出来なくなったと。
自分の身体の変化についていけず元気がでない感じで、
病気の後遺症というものではないのかもしれませんが、自分の手を大事にして欲しいし機能を再構築をしていけば以前とは同じにならなくても新しい自分の手ができる
と伝えました。
喪失感や自己所有感が低下している感じから目を閉じて指を一本ずつ丁寧に回して自分の指を感じてもらうことをアドバイスしてみました。

回答:田代 慎一郎さん
花井さん
脳梗塞で筋出力が低下した方に対しての改善可能性です。私は脳梗塞の臨床事例は持っていないので、一般的な捻挫などの筋出力低下事例と、打撃格闘技の頭部ダメージからの回復事例をもとに提案します。

1・末梢からのアプローチ:感覚入力の増加
 脳梗塞によって、動かすべき手の感覚情報が弱くなっている可能性があります。
 手をさするなどの感覚入力を行うことで筋出力が回復する事例はあります。
*手元を見て文字を書かないときれいに描けないように、手を認識できていないとうまく動かせないことに対する補助

2・末梢へのアプローチ:運動野のアウトプット経路と、制御系の向上 =ミラー間接
 右手の出力を上げるために、ミラー間接として左足の指を曲げる・伸ばすという機能改善。
 右手そのものの改善ではなく、右手を動かす命令を出す脳と、右手までの命令系統が改善する考え方です。
 *また、体芯力では用いませんが、VOMという理論では患側(右手)に対して健側(左手)からアプローチする方法があります。
 *人間の制御系は、「『右』の手」ではなく、「手の『右』」と認識していため、左手を動かそうとすると右手も動作準備に入る。ギプスなどで固定された腕の筋力を落とさないために、反対の腕を鍛えるなど、この理論はかなり活用の幅があります。

3・中枢へのアプローチ:小脳への対応
 右手、を意識するのではなく、右手を動かす脳の性能が落ちている、と認識し、眼や舌の刺激などで脳の運動制御機能そのものを活性化させる取り組みです。脳梗塞だと、言語野にも影響が出るはずなので,舌回し運動などは改善効果が大きいのではないでしょうか?
 *逆にだからこそすでに医療で取り組まれている可能性もあるので、その場合は眼の緩やかな運動や、顎下などの顏の皮膚軽擦なども効果的だと思います。
花井邦宏さん
2の運動野のアウトプットと制御系の向上という所に凄く勉強になりました。(なるほど💡)

ミラー関節の捉え方も何となく漠然としていましたが、ミラー関節の考え方が具体的になった感じがあります。


右の手ではなく
手の右という認識なんですね!

VOM理論は初めて知りましたが
施術のとき健側も施術するといいと言われたりしますが患側でない方に刺激を入れる時の理解と患者さんに対しての説明に大変助かります。

いつも詳しい解説と提案ありがとうございます。
田代 慎一郎さん
すみません

VIМ
でした。
シルク・ドゥ・ソレイユのトレーナーをされていた松栄さんが開発、学者がエビデンスを調べてくれず、エビデンスがないとアメリカでは見向きもされないから、仕方なく自分で研究データを集め論文を出された凄い方です。

右手を脱臼?したダンサーから「15分後に次のステージがあるから何とかしてくれ!」と泣きつかれ、左手で右手の現状を確認したところ、右手の痛みがとれ握力が回復し、感謝の言葉とともにステージに戻った臨床例が理論のベースとのことです。
体芯力の場で他団体の紹介は望ましくないのですが、
エビデンスを持つ実践研究者の紹介
患側にアプローチしない遠位への対応
視点で有益と思い紹介しています。

特に、痛みのある患側で可動域を確認しないことは、不要な緊張を脳に与えない点でとても有効なアプローチだと思います。

いきなりミラー関節にアプローチしにくい時も、患側健側の活用から遠位のミラーに飛ぶと受け入れやすいです。

患部を触らないまま対応する、というきっかけに、とても有効だと感じています。
※呼吸や目からの介入に移りやすくなります。

https://business.fitnessclub.jp/articles/-/1310
目次